ジブリ映画「君たちはどう生きるか」を見てきました。
感想:人によって受けとることが変わる不思議な映画だった。
明確な意図や社会に向けてのメッセージが込められているというわけでなく、不思議な展開に意味付けをすることは可能だけど、敢えて意味付けをしなくても見れる不思議な映画でした。
右脳派と左脳派で考え方や感じ方が全く違うものになるな~という感じです。
タイトルのように「君たちはどう生きるのか、それでいいのか?」という説教臭い投げかけはありません。
どちらかというと、相談される側の気分になります。
これ以上書くとネタバレになるので、ネタバレ無しの感想はここまで。
なんと!パンフレットは後日発売だそうです!
「君たちはどう生きるか」のパンフレットは、劇場公開終了後に通販とTOHOシネマで販売されるそうです。
国語のテストみたいに「作者の意図を答えよ」的な正解を見つけようとせず、「それぞれで感じて、考えて欲しい」って事なのかな。
※ここからネタバレ有の考察です※
ストーリーの要約ではなく、映画を見た人向けの考察です。
巨大化したインコやペリカンが人を食う理由
塔の中のペリカンやインコ達は、批判・誹謗中傷・次回作へのプレッシャーという肥大化した声の象徴でしょう。
インコは、Twitterで好き勝手に批判してくる人達であり、インコが人を食うというのは、人を誹謗中傷することで空虚を満たす(腹を満たす)というグロテスクな有様をストレートに放っていると感じます。
そしてペリカンは身近なプレッシャーの象徴でしょうか。
ペリカンがワラワラ達を食うのは「作品を生み出す前に食われた、殺された」と感じたことが少なからずあったんじゃないかなと推測。
これは会社のお金事情だったり、プロデューサーやスポンサーとの関係だったり、色々ですよね。
「海には魚がいないから、我々はワラワラを食うしかない」というペリカン側の意見も仕方ないと感じました。
結局何がいいたかったの?
考察として意味付けするならば、ジブリスタジオの抱えてる後継者問題とか、賛否両論の声に翻弄される葛藤などをこじつけることが出来ます。
しかし、個人的な見解としては宮崎監督からの壮大な人生相談だったと感じました。
なので「君たちはどう生きるか」という投げかけに対して明確な提案はされていません。
全体の構成は、宮崎駿の人生譚であり心象世界、つまり心の中の全部を見せられた感じで、「俺の人生はこうだったんけど、みんなどう思う?」という投げかけでした。
何者かになっても「人生の正解」は分からん
宮崎駿監督は、今後何世紀にも語り継がれる伝説を残した偉人であり、世界中の賞賛を得た作品を作り、とんでもないお金を生み、何者かになった人です。
しかし現実的な問題として自分の後を引き継げる後継者を残せなかった。(本当は育っていても、世間が「駿」以外を認めないから無かったことにされる。)
塔の主と眞人君とのやり取りは、その問題を感じさせますよね。
ラストで塔の主が「悪意に染まっていない石を集めてきたから、これを3日に一度積むんだ、安心に満ちた自分の世界をつくるんだ」と、眞人君に自分の世界を引き継がせようとしますが、眞人君は「石」を引き継ぐことを拒否して現実に帰っていきました。
3日に一度って、3年に一度のスパンで自分の新作映画を作れって意味だったり?
それは責任重大過ぎる。
私が個人的に受け取ったこと
「悪意に染まっていない石(意思)で新しい世界を作って欲しい」というメッセージは心に響きました。
これは見た人全員が少なからず感じ取っていることですよね。
私達は、長い夜の時代を生きる中で心も頭も壊れてしまいました。(全員壊れています)
夜の時代は長く苦しく、たくさん傷つけられて、本来持つべき物を奪われてばかりでした。その結果、無自覚な悪意に染まってしまい、悪意が世の中に散乱されていることにも無自覚になってしまった。
悪意に染まった石とは、被害者意識や憎しみ(ルサンチマン)のことです。
昨今SNSの治安が悪すぎるのはその現れであり、悲しいニュースを受けて今後はネットでの発言は言論統制の方向に向かうと感じました。そうなれば誹謗中傷はおろか、他者に対する批判も一切許されない社会になる可能性が高いです。
それを判断するのは人ではなくAIですから「そんなつもりじゃなかった」は通用しないでしょう。そうなれば垢バンされたユーチューバーが「理由が分からん」と怒っているようなことがネットを利用する個人全員に起きます。
それに対して言論の自由とか言論統制反対!とか言うのは「悪意に染まった石を積んでいる」のと同じです。
例えば、政治に対して物いいたい時に幼稚な罵詈雑言をいうんじゃなくて、建設的な意見や前向きなリクエストをすることが「悪意に染まっていない石を積む」ってことなんじゃないかな。
新しい意思の世界が出来上がる頃には、他人を批判する気持ちが全くわからないって人が増えてくると思ってます。
みんなへの感謝
この映画は「俺はどうしたら良かったのかな?」っていうボヤキでもあるけど、愛や感謝の気持ちもたくさん込めれらていると感じました。
特に因縁のある相手への愛と感謝ですね。
鈴木さんや、吾郎さんや家族、ジブリスタッフや今まで関わってくれたすべての人に向けて「あんた達は友達だよ」「嫌な事もいっぱいあったけど、今までありがとうな」っていうメッセージでだと思いました。
そういう感謝の気持ちをみんなで受け取りながら作った映画だと感じました。
だから、「なんかよく分からんけど、良かったな」って感じたんだと思います。
「みんなありがとうな」って言える人生だったなら、大成功ですよね。
君たちはどう生きるか
映画では明確な答えは提案されないけど、「何だったんだ」を考えているうちに答えが出ている不思議な映画でした。
ここに書いてあることは私の答えであって「正解」ではありません。
人によって答えは違うはずなので、見た人の数だけ答えや感想は違うと思います。
見た人だけが「自分のだけの答え」を持てる素敵な映画です。
ありがとうございました。